🐱月軌道ステーションが必要な訳2022年08月16日 08:27

月軌道ステーションが必要な訳


(月軌道の宇宙ステーション「ゲートウェイ」について、いま分かっていること)
https://www.gizmodo.jp/2022/08/gateway-4.html

「なぜ月の宇宙ステーションが必要なの?」

最も素朴なこの疑問に、正面からの答はない。

「しかし、このどれもが月の宇宙ステーションなくしては実現できないのです。」

「深宇宙へのミッションを展開するための足場を提供」

目的はいろいろ書いてあるけど、真の必要性については書かれていない。

「ゲートウェイはどこに設置される?」

その理由は、設置される軌道と無関係ではない。

「NRHOは地球と月の重力の平衡点に位置する、燃料消費が少なく済む軌道です。重力によって安定していることに加えて、軌道面は常に地球を向いているので、ゲートウェイのクルーと故郷の地上局との通信は常時確保されるそう。」

それだけじゃない。

この軌道は、月の重力から程よく離れていて、維持するだけじゃなく、侵入離脱も容易だ。

エネルギーが少なくて済むわけだな。

このことが、NASAが月軌道ステーションを建造すると決めた理由だ。

有人探査を行う場合、現状、オリオン宇宙船以外に地球を離脱して月軌道まで人間を運べる手段はない(えーと、まだ飛んでませんが)。

浮沈子も、つい先日まで知らなかったんだが、オリオンは月の低軌道まで下りると、地球に帰ってくることが出来ないんだそうだ。

やれやれ・・・。

で、NASAは、当初から、月軌道へ行くのは着陸のためじゃなくて、深宇宙への入口という位置付けをしていたわけだ。

なにかあっても、オリオンが自力で帰ってくることが出来る軌道は、まあ、他にも理由はあるけれど、有人探査の安全性を担保する絶対的な必要性から選ばれたわけだな。

この軌道以外にも、候補となった軌道はあるに違いないが、それについては知らない。

アルテミスで月面着陸するなんてのは、後付けの理由だ。

トランプ政権が出来る前は、そんな計画はなかったからな。

ここんとこは、ハッキリさせておいた方がいい。

月軌道ステーションは、オリオン宇宙船の運用限界をカバーする必要性から生まれた。

じゃあ、アルテミス3が直接月着陸を目指しているのはどーして?。

政治的スケジュールで、トランプ政権二期目の期間中に月面に着陸させたかったからだろう。

政治に引っ掻き回され続けた月軌道ステーション。

バイデン政権になり、本来のスケジュールにどんどん近づいている。

月軌道ステーションを経由した、2028年までの月面着陸。

想定外だったのは、スペースXによるヒューマンランディングシステム(HLS)の開発だな。

民主党が主導権を握っていた米国議会が、予算を付けずに1社だけの選択になったことから決まった。

完全に想定外・・・。

ありえねー・・・。

スターシップが飛ばなければ、月面着陸はない。

中国に先を越されるのは確実だ(そうなのかあ?)。

もちろん、月周回軌道に人間を送り込むことは可能だ。

米国は、中国が2030年代に月面に着陸して有人活動を行うのを、軌道上から眺めることになる。

スターシップがHLSを飛ばせるようになるのがいつかにも依るけどな。

月軌道ステーションがなくても、オリオンからHLSに乗り換えるという裏技を使って、月着陸を果たすことは可能ということになっているけど、このスキームにも危うさが残る。

ランデブー、ドッキング、乗り移り、離脱、月面降下、着陸、離陸、再度のランデブー、ドッキング、乗り移り、離脱。

どれか一つでも失敗すれば、バックアップはない。

アポロ計画と同じで、一か八かの大冒険になる。

継続的なミッションにはならないのだ。

月軌道ステーションを運用していれば、たとえばHLSをもう1機待機させて、不測の事態に備えることが可能だし、ダイレクトにオリオンとドッキングさせないでも済む。

地球に帰還するための宇宙船との直接のコンタクトは、可能ならば避けたいところだ(S社のHLSなら、なおさらだな)。

何かあっても、宇宙飛行士をいつでも手戻り可能な状況に置くためには、月軌道ステーションは必要不可欠なアイテムでもある。

まあ、アルテミス3は、それで行くと決めたわけだから、直接ドッキングさせる方式で行くんだろうが、その後のスケジュールは具体化していない。

2030年以降に、月軌道ステーションが建造された後に、そこを経由する形で再開するのが無難だ。

ひょっとしたら、S社のHLSじゃなくなっているかもしれないしな。

浮沈子的には、その可能性は否定できないと考えている。

中国の有人月着陸の目途が立てば、米国は動く。

まともなHLSの開発に予算を付け、実現可能性を追求するだろう。

スターシップがまともかどうかは、まあ、意見が分かれるところだからな。

裏では、いろいろ駆け引きがあっただろうが、詳細は知らない。

ともあれ、月軌道ステーションは、安全で継続的な月面着陸にとっては必要な仕掛けだ(不可欠ではないかも:オリオン使わなければ)。

では、それ以遠の深宇宙進出についてはどうか。

ハッキリ言って、なくても差し支えない。

いろいろ支障はあるだろうが、地球周回軌道から有人探査機を飛ばして運用することは不可能じゃない。

将来、中国が有人火星探査を実行することになれば、おそらくそうするだろう。

では、月軌道ステーションの、真の意義とは何か。

米国が、世界の宇宙開発をリードしているというアピールをするための道具だ。

将来継続的に火星探査を行う上で、月からの資源調達を行うなら、ロジスティクス的に有利ということは工学的に証明されているが、そうでない限り、有人深宇宙探査にとって、月軌道ステーションの合理的意義はない。

ISSのような長期滞在は望めないしな。

ひょっとしたら、浮沈子が認識していない理由があって、ロジ的に地球の重力井戸から離れたところに拠点を置いた方が有利という計算があるのかも知れない。

火星探査機の規模が超巨大になり、組み立て後の現実的な加速が地球低軌道からでは困難ということになれば、そういう選択肢もあるだろうが、その際には、軌道離脱のための加速だけに使うロケットを装備して、その後、切り離すという手法もある。

ディープスペーストランスポーター(DST)については、未だに概念設計の段階で、具体な話は見えていないからな。

NASAは、SLSを次期主力ロケットと位置付けている。

まあ、言ってみれば、これを使うための口実をでっち上げているに過ぎない(そうなのかあ?)。

DSTの規模だって、そこから決まってくる可能性が高い。

いろいろ理屈をつけて、やっぱ、有人深宇宙探査には、月軌道ステーションが必要だと結論付けるに違いない。

S社が地球低軌道から火星に向けて、直接有人ロケット飛ばしたら、どう答えるかが見ものだけどな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(月面基地:今世紀中はムリポ)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2022/06/21/9502206

「(NASAの将来の月面ミッションについてリークされた見方をしました—そしておそらく遅れます)
https://arstechnica.com/science/2022/06/we-got-a-leaked-look-at-nasas-future-moon-missions-and-likely-delays/

「ステーションはほぼ10年前に始まり、主にオリオン宇宙船のサービスモジュールの推進力の欠点のために作成されました。要するに、スペースローンチシステムロケットと組み合わせると、オリオンは低い月周回軌道に完全に飛んでから地球に戻るのに十分な推進力を持っていません。そこでNASAは、より高い楕円軌道にある月ゲートウェイの概念を考案しました。」

注意深く読み直すと、「スペースローンチシステムロケットと組み合わせると」と、条件付きで書いてある。

オリオンがダサいわけじゃないんだ・・・(まあ、似たようなもんですが)。

SLSは、将来強化発展することになっているからな。

ひょっとすると、月低軌道への侵入離脱も、容易に出来るようになるかもしれない。

まあ、その頃には、月軌道ステーションは出来上がっているかもしれないし。

既に書いたように、ドッキングポートとしての役割もある。

継続的な月面へのアクセスを安全に行うためには、いずれにしても、そういう仕掛は必要になる。

月面から燃料補給を受けることが容易になれば、月周回軌道上に拠点を設けることは、少なくとも火星探査にとっては有利だ。

(火星に行くには月を経由して行くべし?)
https://www.gizmodo.jp/2015/10/post_18560.html

「月にある土壌と水が燃料に変換できるということ、そしてその作業が比較的短時間でできるということです。もしもこの前提がクリアになり、かつ月にある物質を燃料に変換する設備と、2回の引力からの脱出のために必要なものがあれば、火星へ行くために必要だったいままでの重量の68%を切り捨てることができるようになります。」

まあ、そんなに簡単に月面開発が出来るとは思えないけどな。

遠い遠い将来の話だろう・・・。