BN1(スーパーヘビーブースタープロトタイプ1号機)は飛ぶのか2020年12月19日 04:39

BN1(スーパーヘビーブースタープロトタイプ1号機)は飛ぶのか
BN1(スーパーヘビーブースタープロトタイプ1号機)は飛ぶのか


(スーパーヘビー(1度))
https://www.elonx.cz/vse-o-super-heavy-starship/#superheavy

72mの高さ、9mの直径、8基のジンバル付きと20基のジンバルなしラプターエンジン(いずれも大気圏用)以外は、謎に包まれた巨大ブースターである。

「唯一の大きな違いは、30以上のラプターエンジンからの推力を伝達するタンクの最下部であると言われています。」

そのうち訂正されるだろうけど、エンジンの数が違っている。

「脚はしっかりしていて、傾いていません。」

ファルコン9のパカッと展開する柔な脚では、巨大なブースターを支えきれないんだろう。

浮沈子的関心が高いのは、アクロバット的着陸に失敗したスターシップより、実機が作成されれば1000回の再使用(まあ、当てにはなりませんが)が予定されているこのブースターの方だ。

特に、材料としてステンレススチールのままで行くのか、製造実績のあるアルミ合金或いはカーボン系複合材料に変更されるのかが問題だな。

そんな話は何処にも出ていないけど。

熱的負荷も小さく、構造強度や耐久性と軽量化との高いレベルでのバランスが求められるわけで、ブリキ細工(ステンはブリキではありませんが)のままで押し通すのか。

仕掛的には、シンプルそのものだが、大型化したことによる物理的な特性は、ファルコン9の1段目とは異なる。

特に、SN8で失敗したラプターの再着火の問題は大きい。

ラプターの着火は電極間に火花を飛ばすライター方式だと言われているが、おそらく信頼性の高い化学着火に変更になるのではないか(少なくとも着陸時)。

特に、スーパーヘビーは、その運用上、毎回地球に着陸するからな(火星にはいきません)。

その都度、化学着火カセットの交換が可能だ。

想定外の複数回の着火はない。

エンジンはともかくとして、機体構造上も重量が嵩みやすいしな。

試験機は、コストが安いステンで作って、実機は複合材料になるのではないか。

そうでなければ、1000回の再使用での耐久性や、軽量化を実現することは困難だろう。

(SpaceXの最初のスターシップブースターは、カスタムパーツが到着すると一歩近づきます)
https://www.teslarati.com/spacex-first-starship-super-heavy-booster-custom-parts/

「最初のスーパーヘビーブースターが少数のラプターエンジンでのみ飛行すると仮定すると、スペースXがBN1を完了するために必要なのは、その唯一の8エンジンの「パック」だけかもしれません。」

イーロンXの記事では、2基のエンジンで上がると言われているから、少なくともBN1については8基ものエンジンを据え付けるとは思えない。

どころか、浮沈子的には、スターシップと同じく、加圧試験で吹っ飛ぶ可能性が高いと見ている。

補助タンクのないシンプルな構成だし、上段を支えるために構造強度も増やすだろうから、溶接技術さえ成熟していれば、経験値を上げてきた製造プロセスでチョンボするとは考えにくいところだ。

しかし、同時に、軽量化を追求しなければならない飛び道具だから、設計では相当追い込んでくるに違いない。

最終的に複合材料に移行するとしても、プロトタイプで飛ばさなければ話は始まらないからな。

肉厚を削り、補強材を減らして軽くする。

製造誤差も含めて、どこまで追い込めるかは実際に作ってみなければ分からない。

壊してみなけりゃ、分からんだろう?。

浮沈子はBN1が飛ばない方に、1票だな。

別のアプローチもある。

板厚を分厚くし、補強も十分入れて強度を確保し、プロトタイプとしての飛行が出来ればいいと割り切って作る。

それはスターシップの初期のアプローチとして、給水塔のようなMk1で使われた。

まあ、あれは、どちらかといえば、ラプターの性能試験に近かったからな。

しかし、その段階は既に終わっている。

スーパーヘビーに求められているのは、それ自身を空中に飛ばすことじゃない。

スターシップを加速して、宇宙空間に放り出すことだからな。

そして、薬籠中にしているパワードランディングで着陸するわけだ。

どうせなら、スーパーヘビーでも、スターシップみたいにベリーフロップして、空力による減速で着陸時の燃料を節約するのがいい気もするんだがな。

その分、巨大な翼を備えなければならず、機構が複雑化するし、故障の頻度も増える。

ここは、文字通り力業で勝負というところか。

いずれにしても、当分は構造強度を探りながら、エンジンの試験を兼ねる試験を続けることになる。

1号機には、エンジンさえ付かないかもしれない。

3機くらいぶっ壊して、ようやくエンジン付けて着火してみる感じだろう。

配管系の性能も見なければならないからな。

BN4くらいでエンジン点火、まあ、1回くらいは爆発してもらって、BN5くらいで150mのホッピングだろう。

着陸脚の性能を見る必要があるしな。

スターシップと異なり、高高度試験の必要性はない。

空力を利用した着陸じゃないからな。

それでも、飛ばして見ないことには宇宙空間からの超音速落下の制御は確認できない。

単独で上げることはできない(空気抵抗で加速できずに空中分解する)から、スターシップを先っちょに付けて飛ばすことになる。

それは、早くても2年後(2022年)だろう。

機体材料の問題は、その頃に表面化してくるかもしれないし、もっと先かもしれない。

運用を確立することを優先するなら、ステンのまま実機にして、途中から変更することもあり得る。

ステンのまま1000回の再使用という選択肢はない(たぶん)。

そして、BN1が空中に上がることも。

例によって、浮沈子のテキトーな妄想だから、当てにはならない。

スターシップを先っちょに付けての試験に成功すれば、貨物機としての実機運用への道が開ける。

まあ、フルパワー掛けて何機かぶっ壊した後だけど。

早ければ5年、おそらく10年先には実機が飛んでいるかもしれない。

2020年代の完全運用は難しいだろうな。

スターリンク衛星を打ち上げながら、爆発や墜落を繰り返しつつ、完成度を上げていく。

100回くらい成功すれば、衛星打ち上げに使おうという客が付く可能性がある。

1000回成功すれば、そろそろ有人飛行の芽が出てくる。

2030年代の中ごろになれば、そういう話も現実味を帯びてくるに違いない。

そう、それまで開発し続けることができればな。

もちろん、異なるアプローチもある。

スターシップの先端に、クルードラゴンを括りつけるとかしてな。

スターシップは、単なる回収可能な2段目のロケットとして、有人カプセルを放出し、一か八かの(!)ベリーフロップで帰還して、宇宙飛行士はクルードラゴンで安全に帰ってくる(もちろんパラシュート開いてな)。

完全再使用ロケットとしては、ちょっとショボいけど、そういう運用はあり得る(打ち上げ時の緊急脱出とかどーする?)。

まあ、有人化の話は相当先だし、スターシップの開発だって、この先、どう転がるかは分からない。

開発中止は明日発表されてもおかしくないし、そうでない保証などどこにもない。

ラプターエンジンの完成度(再着火)が、あんな体たらくでは話にならないからな。

ファルコン9で十分儲かっているし、スターリンクだって、テキトーなところで展開を止めてしまえばいいからな(数千機程度のコンステレーションなら十分維持できるしな)。

火星移民とか、ワケワカな話を放り出して、ちんまりと打ち上げロケット業と衛星インターネット商売に精を出して凌げばいいのだ。

それだって、あと10年は余裕で食っていける。

ライバルが、部分的再使用に成功するには、そのくらいの時間がかかるということだ。

コスト的にS社が主導権を握り続ける限り、ライバルは少ない打ち上げ件数で、それなりの利益に甘んじなければならない。

再使用の開発経費をそこからひねり出す動機もない(ULAは、たぶん開発しないだろう)。

当局が開発費を出して援助しない限り、そういう状況にはならない。

ライバルが開発出来ないような、最適な価格を設定すればいいのだ。

打ち上げロケットは、S社の事実上の独占になるからな。

スターリンク衛星は、おそらくコスト15億円くらいで上がっているだろう(もっと安いかも)。

インドだって、ちょっと太刀打ちできないに違いない(GSLVで30億円くらい?)。

しかも、再使用の回数が増えるに従って、コストは下がる一方だしな。

ユーザーも、新品の高いロケットより、使用実績のある中古でのリーズナブルな打ち上げ価格を選ぶようになってきている。

NROやNASAでさえ、積極的に中古で上げ始めている。

ここまでの信頼を得るためには、100回の打ち上げが必要だったからな。

しかも、ほとんどの打ち上げでは、なにがしかの改良が施され、進化し続けた結果だ。

他社が、この実績を得るには、軽く10年は掛かる。

追随できるのは、影も形もないブルーオリジンのニューグレン程度だろう。

それが実現するのは、いつの日になるのか。

その答は、ジェフベゾスしか知らない・・・。