空中発射衛星 ― 2014年04月02日 01:16
空中発射衛星
ずいぶん前に聞いた話だと思っていたら、新手の話があるらしい。
(ボーイング F-15E戦闘機からの超小型衛星打ち上げシステム開発決定)
http://response.jp/article/2014/04/01/220322.html
(Airborne Launch Assist Space Access)
http://en.wikipedia.org/wiki/Airborne_Launch_Assist_Space_Access
(AIRBORNE LAUNCH ASSIST SPACE ACCESS (ALASA):元ネタ?)
http://www.darpa.mil/Our_Work/TTO/Programs/Airborne_Launch_Assist_Space_Access_%28ALASA%29.aspx
「100ポンド(約45キログラム)までの超小型衛星を、1回100万ドルの費用で打ち上げるのが目標。」
しかし、米国は既に空中発射ロケットを持っている。
(ペガサス (ロケット))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%AC%E3%82%B5%E3%82%B9_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88)
「ペガサスロケットは3段式固体燃料ロケットで、巡航ミサイルに似た有翼型の形状を持ち、航空機に搭載されて空中から発射される。」
既に42回打ち上げ(切り離し?)を行い、37回成功(3回失敗、2回部分的成功)で、最近では昨年6月に行っている。
1997年以降、28回連続成功である。
ペイロードも低軌道で443kgと、まあまあ。
ただし、少し高いらしい。
「母機や1,2段等の構成が変更された事で費用は上昇、近年の年間1機体制では$20M以上にもなっている。これによって当初目指していた低コストでの運用は困難となっており、約1.5倍のペイロードで$19Mのミニットマン弾道ミサイル転用ロケットミノタウロスIに顧客が流れている。」とある。
(ミノタウロスI)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%82%B9I
LEOで580kgだ。
あとは値付けの問題だな。
空中発射ロケットは、値段の問題だけではない。
(空中発射ロケット)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E4%B8%AD%E7%99%BA%E5%B0%84%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88
「設備
必要な地上設備は母機発進用の滑走路やランチャのみであるため、大規模な射場を必要としない。これによって土地の確保費用や地上設備への投資、維持費が比較的少額である。」
「発射条件
地上や海上からの発射では、射場上空の氷結層の有無や雷雲の有無など、天候が発射計画を大きく左右する。これに対し成層圏では天候が安定しているため、母機が飛行可能な天候であれば地上の天候に囚われずに発射することが可能となる。また、射場の緯度によらず任意の空域で発射することが可能であるため、目標とする軌道に合わせ最適な条件で発射することが可能である。同様に公海上を発射空域に選択することが可能であり、燃焼後のロケットやフェアリング等の飛行に伴う落下物や、不具合発生による指令破壊後の落下物に伴う飛行経路直下およびその周辺領域の飛行安全確保が比較的容易である。日本のように漁業活動に伴って打ち上げ時期の制限が存在する場合においては、この制限を回避する手段としても有効である。」
「発射環境
高空では地上よりも低重力であり大気密度や大気圧も低いため、重力損失、空気抵抗損失、推力損失が低減される。これによって地上や海上から発射する場合と同等のペイロードを、より小型のロケットで目的の高度や軌道に到達させることが可能となる。地上や海上からの発射においては初段点火後のプルームの反射が機体の振動環境を悪化させる主たる原因となっているが、空中発射においてはプルームの反射が発生しないため、振動環境が比較的穏やかである。また、低い空気密度によって空力加熱も低減されるため熱環境も比較的穏やかである。」
「問題点
母機の搭載方法の問題や搭載能力に限界があるため、大きな推力を必要とする大型の人工衛星や、大きな増速を必要とする惑星探査機の打ち上げは困難である。また、年間飛翔機数が少ないと母機の維持費がコストを押し上げ、結果として高コストになってしまう場合がある。」
過去に実用になったのはペガサスだけだが、今後リリース予定のものもある。
(LauncherOne:画像参照)
http://www.virgingalactic.com/launcherOne/
ペイロードは225kgと、少し軽い。
しかし、F-15から発射する衛星は45kgだから、十分のような気がする。
「これまで、航空機を使った空中発射による人工衛星打ち上げシステムのコンセプト発表は少なくない。2011年にNASAが発表した報告書では、今回と同じボーイングが2006年に検討したF-15 グローバル ストライク イーグルの上部に空中発射システムを取りつけるシステムや、仏ダッソー社による、ミラージュIVの下部に空中発射システムを取りつけて最大70キログラムの衛星を打ち上げる「MLA」システムなど、119もの構想があるとしている。ALASAが実現すれば、長年検討されてきた低コスト打ち上げシステムが登場することになる。」
レスポンスの記事にはこうあるが、24年も前からある打ち上げ方法である。
今更、ニュースになるんだろうか。
民間が先行して、軍用としては後追いになる。
軍事衛星は、金に糸目を付けずにバンバン打ち上げてきたが、そうもいっていられなくなったのだろう。
ちっ、世知辛い世の中になったもんだぜ。
まあ、それで3060万ドルもの開発費が転がり込むんだから、ボーイングにとっては悪い話じゃあない。
1回1億円で打ち上げるらしいが、スペースXのファルコン9が再利用されたら、同じ値段で100倍のペイロードを打ち上げられるようになるかも知れない。
しかし、前述したように、空中発射ロケットのメリットは即時性ということもある。
例えば、紛争が勃発して、直ぐに衛星を展開しなければならなくなった時、常時滞空させておくのではなく、短期間の運用を想定した衛星を即時展開できればコスト的にも安上がりだし、衛星のブラッシュアップも容易だ。
このニュースの意義は、たぶん、軍事衛星の運用が、これからは変わってくることを示唆している点にあるのではないか。
45kgの衛星群で、地上が支配されるわけだ。
大型軍事衛星を常時滞空させて運用していた時代は、終わろうとしているのかもしれない。
まあ、完全に無くなるわけではなくて、特性に応じて併用するということになるんだろうな。
面白かったのは、レスポンスはカテゴリーを航空と宇宙に分けているが、この記事は両方のカテゴリーに掲載されていた。
ま、そりゃそうだが・・・。
ずいぶん前に聞いた話だと思っていたら、新手の話があるらしい。
(ボーイング F-15E戦闘機からの超小型衛星打ち上げシステム開発決定)
http://response.jp/article/2014/04/01/220322.html
(Airborne Launch Assist Space Access)
http://en.wikipedia.org/wiki/Airborne_Launch_Assist_Space_Access
(AIRBORNE LAUNCH ASSIST SPACE ACCESS (ALASA):元ネタ?)
http://www.darpa.mil/Our_Work/TTO/Programs/Airborne_Launch_Assist_Space_Access_%28ALASA%29.aspx
「100ポンド(約45キログラム)までの超小型衛星を、1回100万ドルの費用で打ち上げるのが目標。」
しかし、米国は既に空中発射ロケットを持っている。
(ペガサス (ロケット))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%AC%E3%82%B5%E3%82%B9_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88)
「ペガサスロケットは3段式固体燃料ロケットで、巡航ミサイルに似た有翼型の形状を持ち、航空機に搭載されて空中から発射される。」
既に42回打ち上げ(切り離し?)を行い、37回成功(3回失敗、2回部分的成功)で、最近では昨年6月に行っている。
1997年以降、28回連続成功である。
ペイロードも低軌道で443kgと、まあまあ。
ただし、少し高いらしい。
「母機や1,2段等の構成が変更された事で費用は上昇、近年の年間1機体制では$20M以上にもなっている。これによって当初目指していた低コストでの運用は困難となっており、約1.5倍のペイロードで$19Mのミニットマン弾道ミサイル転用ロケットミノタウロスIに顧客が流れている。」とある。
(ミノタウロスI)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%AD%E3%82%B9I
LEOで580kgだ。
あとは値付けの問題だな。
空中発射ロケットは、値段の問題だけではない。
(空中発射ロケット)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E4%B8%AD%E7%99%BA%E5%B0%84%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88
「設備
必要な地上設備は母機発進用の滑走路やランチャのみであるため、大規模な射場を必要としない。これによって土地の確保費用や地上設備への投資、維持費が比較的少額である。」
「発射条件
地上や海上からの発射では、射場上空の氷結層の有無や雷雲の有無など、天候が発射計画を大きく左右する。これに対し成層圏では天候が安定しているため、母機が飛行可能な天候であれば地上の天候に囚われずに発射することが可能となる。また、射場の緯度によらず任意の空域で発射することが可能であるため、目標とする軌道に合わせ最適な条件で発射することが可能である。同様に公海上を発射空域に選択することが可能であり、燃焼後のロケットやフェアリング等の飛行に伴う落下物や、不具合発生による指令破壊後の落下物に伴う飛行経路直下およびその周辺領域の飛行安全確保が比較的容易である。日本のように漁業活動に伴って打ち上げ時期の制限が存在する場合においては、この制限を回避する手段としても有効である。」
「発射環境
高空では地上よりも低重力であり大気密度や大気圧も低いため、重力損失、空気抵抗損失、推力損失が低減される。これによって地上や海上から発射する場合と同等のペイロードを、より小型のロケットで目的の高度や軌道に到達させることが可能となる。地上や海上からの発射においては初段点火後のプルームの反射が機体の振動環境を悪化させる主たる原因となっているが、空中発射においてはプルームの反射が発生しないため、振動環境が比較的穏やかである。また、低い空気密度によって空力加熱も低減されるため熱環境も比較的穏やかである。」
「問題点
母機の搭載方法の問題や搭載能力に限界があるため、大きな推力を必要とする大型の人工衛星や、大きな増速を必要とする惑星探査機の打ち上げは困難である。また、年間飛翔機数が少ないと母機の維持費がコストを押し上げ、結果として高コストになってしまう場合がある。」
過去に実用になったのはペガサスだけだが、今後リリース予定のものもある。
(LauncherOne:画像参照)
http://www.virgingalactic.com/launcherOne/
ペイロードは225kgと、少し軽い。
しかし、F-15から発射する衛星は45kgだから、十分のような気がする。
「これまで、航空機を使った空中発射による人工衛星打ち上げシステムのコンセプト発表は少なくない。2011年にNASAが発表した報告書では、今回と同じボーイングが2006年に検討したF-15 グローバル ストライク イーグルの上部に空中発射システムを取りつけるシステムや、仏ダッソー社による、ミラージュIVの下部に空中発射システムを取りつけて最大70キログラムの衛星を打ち上げる「MLA」システムなど、119もの構想があるとしている。ALASAが実現すれば、長年検討されてきた低コスト打ち上げシステムが登場することになる。」
レスポンスの記事にはこうあるが、24年も前からある打ち上げ方法である。
今更、ニュースになるんだろうか。
民間が先行して、軍用としては後追いになる。
軍事衛星は、金に糸目を付けずにバンバン打ち上げてきたが、そうもいっていられなくなったのだろう。
ちっ、世知辛い世の中になったもんだぜ。
まあ、それで3060万ドルもの開発費が転がり込むんだから、ボーイングにとっては悪い話じゃあない。
1回1億円で打ち上げるらしいが、スペースXのファルコン9が再利用されたら、同じ値段で100倍のペイロードを打ち上げられるようになるかも知れない。
しかし、前述したように、空中発射ロケットのメリットは即時性ということもある。
例えば、紛争が勃発して、直ぐに衛星を展開しなければならなくなった時、常時滞空させておくのではなく、短期間の運用を想定した衛星を即時展開できればコスト的にも安上がりだし、衛星のブラッシュアップも容易だ。
このニュースの意義は、たぶん、軍事衛星の運用が、これからは変わってくることを示唆している点にあるのではないか。
45kgの衛星群で、地上が支配されるわけだ。
大型軍事衛星を常時滞空させて運用していた時代は、終わろうとしているのかもしれない。
まあ、完全に無くなるわけではなくて、特性に応じて併用するということになるんだろうな。
面白かったのは、レスポンスはカテゴリーを航空と宇宙に分けているが、この記事は両方のカテゴリーに掲載されていた。
ま、そりゃそうだが・・・。
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