軽水炉2016年09月04日 18:13

軽水炉


研究炉シリーズで、軽水炉の系譜について書こうとして勉強中。

現在稼働中、あるいは稼働可能、あるいは近々稼働予定の商業用原子炉の約8割が軽水炉ということもあり、メジャーな原子炉形式だ。

そもそも、原子炉の区分というのは、様々な切り口で行われるので注意が必要だ。

浮沈子も、やや混乱しているので、この辺りで整理しておこう。

その前に、原子核反応の特性を理解しておく必要がある。

化学反応により、急速な酸化を起こして燃料が燃えるのとは異なり、核分裂を起こして熱を発生させる場合は、「燃える」という比喩的な表現が使われるだけで、いわゆる燃焼とは全く違う特性がある。

ウランとかプルトニウムの核分裂を継続的に起こすためには、まあ、放っておいても自然に崩壊するとはいえ、数万年という半減期では、役に立たない。

人間にとって都合よくエネルギーを取り出すには、中性子をぶつけて連鎖反応を起こさせる必要がある。

その場合、原爆のように一気に反応が進んで制御不可能にならないような仕組みが必要なわけだ。

実は、そこのところが良く分かっていない。

燃料が一定以上集まると、連鎖反応が起こるとか、中性子の速度を落としてやると連鎖反応が進むとか、燃料の温度を上げてやると反応が減少するとか、そういう定性的な話は出てくるが、そもそもなぜそうなのかが分からない。

たぶん、一番重要なのは、どんな燃料を使うかというところなんだろう。

濃縮されていない天然ウランを使うとか、低濃縮ウランを使うとか、高濃縮ウランを使うとか、プルトニウム(混合燃料)を使うとかいうのもある。

高速炉の場合、減速材を使わないというが、それで連鎖反応が進むというのも理解できていない。

その高速炉で使われるMOX燃料が、速度を落とした中性子を使って反応させる原子炉の中で燃えるというのも分からない。

中性子を吸収させてやると、反応が減少するというのもある。

効率よく反応させるためには、なるべく中性子を吸収しない方がいいらしいのだが、そういう材料を使って、燃え方を制御するということも行っている。

原子炉の説明の中でよく出てくる制御棒とか、冷却材の中には、中性子を吸収する成分が含まれていて、それを調節して出力を制御している。

ざっと、こんな感じかあ?。

というわけで、さっぱり分かっていないことがバレたわけだが、原子炉の区分というのが、中性子を減速させるかさせないか、減速のための材料は何かという切り口で行われる場合、それは、原子核分裂という原子炉の根幹にかかわる部分での区分であることが分かる。

冷却材についても、中性子の吸収という点では無関係ではない。

とにかく、中性子をどう制御するかというのが、原子炉のキモだということなわけだ。

・燃料:天然ウラン、低濃縮ウラン、高濃縮ウラン、プルトニウム混合燃料、その他(トリウム、溶融塩炉など)
・減速材:使わない(高速炉)、黒鉛、重水、軽水、その他
・冷却材:空気、二酸化炭素、ヘリウム、重水(減速材と共用)、軽水(減速材と共用の場合あり)、ナトリウム、鉛、その他

この他に、軽水炉では、加圧水型と沸騰水型があるし、冷却水の溜め方にしても、プール型とかループ型があったりする。

冷却材の温度に着目して、高温炉というのもある。

適当に組み合わせるわけにはいかないにしても、いろいろな原子炉が考えられるわけで、原料の供給、濃縮の手間、運用や経済性、規模拡張性の問題から、ある範囲に絞られてくるんだろう。

もともと、原子力潜水艦の動力炉(ボイラーの熱源)として発展した軽水炉にしても、ウラン濃縮可能な米国を中心に普及したわけだ。

(GTHTR300(C))
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/08/15/8152509

「・米国:
加圧水型×68(建設中×5)
沸騰水型×34」

約100基の商用原発全てが軽水炉だ。

・燃料:低濃縮ウラン
・減速材:軽水
・冷却材:軽水

冷却については、加圧水型と沸騰水型があるが、どちらも軽水を使う。

しかし、良く調べてみると、全く同じではない。

沸騰水型は、まあ、使っているうちにいろんなものが混じってくるとしても、基本的にはただの水だが、加圧水型にはホウ酸を混ぜて、その濃度を変えることにより、中性子の吸収をある程度コントロールしている。

(ホウ酸:用途)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A6%E9%85%B8#.E7.94.A8.E9.80.94

「ホウ素の高い中性子捕獲能力を利用して、原子炉の核分裂で生成する熱中性子への毒物質として利用されることがある。この場合は容易に水溶するホウ酸として利用することが多く、ホウ酸水の場合は冷却材も兼ねる。」

加圧水型の原子炉の場合は、冷却材はホウ酸水というのが正しいんだろうな。

ホウ酸水を使わない加圧水型の原子炉があるのかどうかは知らない。

なお、沸騰水型は、気相(水蒸気)と液相(水)が出来ることから、ホウ酸が析出するために、混ぜることが出来ないらしい。

(ケミカルシム)
http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=242

「原子炉冷却材に熱中性子吸収の大きなホウ酸を溶解し、ホウ酸の濃度を調節することにより反応度を制御する方法をいう。」

「加圧水型軽水炉では、原子炉の出力を制御するため炉心に制御棒を挿入すると出力分布にひずみを生じるため、これを緩和するためにケミカルシムを併用している。」

「また、燃料の燃焼に伴う時間的に緩やかな反応度低下に対して補償を行う役割を担っている。」

「なお、沸騰水型軽水炉では一次冷却水が水と蒸気の二相流となり、溶解物が析出する可能性があるのでケミカルシムは行わず、再循環流量の調整等によって出力制御を行う。」

加圧水型の場合、一次冷却系は、圧力がかかっていて冷却水が沸騰しないために、吸収材を混ぜて動的に制御しているわけだ。

なんか、こっちの方が有利な感じがするな。

沸騰水型は、一次冷却水をいきなり沸騰させてタービンに送り込むわけで、熱効率は高いかもしれないが、ちょっと野蛮(?)な気がする(そうなのかあ?)。

さて、いい加減な知識で、適当にヨタ記事を書いていたら、こんなニュースが出ていた。

(停止中の伊方原発2号機で冷却水漏れたか)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160901/k10010664781000.html

「冷却水に含まれるホウ酸がこびりついているのが見つかりました。」

「漏れた量はおよそ10ミリリットルと推定され、外部への影響はないとしています。」

放射性物質を含む一次冷却系の配管が破れていたことが明らかになったわけで、停止中とはいえ、本来なら大騒ぎかも知れないが、福一の事故の後は、感覚がマヒしているので、全く気にならない(そっ、そうなのかあ?)。

既に廃炉作業中の1号機(1977年)と同じ頃に建設されていた(1981年)同型炉なわけだから、ひょっとすると、廃炉に向けてのアピールなのかもしれない。

3号機(再稼働中)だけで、十分なのかもしれない。

(伊方原発の事故想定し避難訓練 3号機の再稼働後初)
http://www.asahi.com/articles/ASJ936DWSJ93PTIL011.html

「避難経路や岸壁の崩壊、津波の危険性などは想定されなかった。」

「伊方3号機は今月7日にも営業運転に入る見込み。」

まあいい。

2号機は、圧力容器本体にも懸念がある。

(国内8カ所13基調査へ 圧力容器に強度不足の疑い)
http://mainichi.jp/articles/20160903/k00/00m/040/093000c

「問題のメーカーが製造していたのは、ほかに東京電力福島第2原発2、4号機(福島県)▽北陸電力志賀1号機(石川県)▽関西電力高浜2号機(福井県)、大飯1、2号機(同)▽日本原子力発電敦賀2号機(同)▽四国電力伊方2号機(愛媛県)▽九電玄海2、3、4号機(佐賀県)−−の原子炉圧力容器。」

どうやら、強度不足の疑いがあるらしい。

「6社は10月末までに強度に問題がないかなどをそれぞれ調査し、規制委に報告する。」

志賀1号機は、直下に活断層の疑いがあり、高浜2号機は60年の運転延長が認められるなど、話題が尽きない。

まあ、どうでもいいんですが。

ちなみに、米国では、加圧水型はウエスチングハウス、沸騰水型はゼネラルエレクトリックが開発を進めてきた経緯がある。

(原子力発電技術の開発経緯(PWR))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-04-01-01

「PWRを最初に採用したのは1954年に進水した米国原子力潜水艦Nautilusである。ウェスチングハウス社(WH社)はこの開発に協力しこれを基に発電用原子炉の開発を進めた。」

(原子力発電技術の開発経緯(BWR) (02-03-01-01))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-03-01-01

「炉容器内で軽水を沸騰させて直接蒸気を得る沸騰水型炉(BWR)は、発電プラント構成が単純化でき経済的にも優れたものとして、原子力発電の技術開発の当初より期待されていた。」

「GE社はカリフォルニア州のバレシトス研究所に電気出力500kWの原型炉(VBWR)を建設し1957年11月全出力運転に成功した。」

なお、記事中にもあるように、アルゴンヌ国立研究所が当初の開発を行っている。

この研究所については、そのうち、詳しく調べなくっちゃな。

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