いつか来た道なのか2018年10月17日 09:04

いつか来た道なのか
いつか来た道なのか


コンゴ民主共和国(DRC)北東部でのエボラが、怪しい状況にあると報じられている。

(エボラ出血熱、死者125人=コンゴ東部)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018101400343&g=int

「感染の中心は、ウガンダ国境に近い北キブ州北部の町ベニだが、防護服を着た保健関係者が襲われる事件が続いており「感染の規模を把握できていない。非常に危険だ。状況を憂慮している」と語った。」

「恐怖心や誤解から住民が保健当局の活動を拒む上、武装勢力が散発的に戦闘を仕掛け、継続的な医療活動もままならない。」

この後、CNNが報じたのがこれ。

(コンゴのエボラ出血熱、感染拡大の恐れ 米対策チームが退避)
https://www.cnn.co.jp/world/35127065.html

「対応支援に当たっていた米疾病対策センター(CDC)の専門家チームが、安全上の懸念を理由に、最悪の被害が出ている地域から退避した。」

「隣国のウガンダだけでなく、ルワンダ、南スーダン、ブルンジへの拡大も懸念される一方、アフリカ大陸の外へ感染が拡大する可能性は低いとしている。」

うーん、びみょーな情勢だな。

DRC保健当局は、幸い正しい認識を持っていて、状況が危機的要素をはらんでいることが分かっているからな。

医療的にも、2014年のアフリカ西部での大流行の時のように、後手後手にまわって、パニックになるというようなことはない。

(コンゴ(DRC)のエボラ、ヤバいかも)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2018/08/18/8945146

切り込み隊(!)である国境なき医師団(MSF)や、今回報道されたようにCDCのスタッフも現地入りしている。

地域限定のアウトブレイクから、急速に拡大する懸念は、今のところはまだない。

紛争地域だと言っても、散発的に戦闘が起こっている程度で、大量の難民が雪崩を打って避難しているわけじゃなさそうだ(未確認)。

流行拡大が納まらない最大の原因は、AFP時事が報じているように、地元の理解の不足に尽きる。

しかし、それを解決するには、丁寧な啓発活動と感染者の追跡調査、感染予防のための保健対策の普及が唯一の方法なのに、戦闘地域であるために効率的に行えない。

感染のスピードと、それを防ぐための措置のスピードが競っているわけだが、防疫についてはハンデを負わされている。

びみょーな情勢下では、強権的対応のために軍隊を派遣するなどという荒業は繰り出せないだろうしな。

最悪の状況で、地域ごと封鎖するなどということはできないわけだ。

そういう事態にならないようにするために、丁寧で手間の掛かる啓発活動や予防措置を、人的資源を投じて積極的に行う必要があるんだろうが、それが出来ないでいる。

保健相が嘆くのは、そこだ。

「感染の規模を把握できていない。非常に危険だ。状況を憂慮している」

WHOの関連ページはここ。

(Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo)
http://www.who.int/ebola/situation-reports/drc-2018/en/

今朝の段階では、14日付のレポートが上がっていて、214人の感染者と139人の死者が報告されている。

もちろん、実態が把握されているとは言えない中で、一部の感染者と死者であることに注意だけどな。

しかし、最初の感染が報告されてから3か月以上経っているわけで、既に初期の段階は過ぎている。

Situation reportsやDisease Outbreak News (DONs)を見ると、確定診断の割合が多い。

検査体制が整っているからなのか、状況の把握が絶望的に遅れているだけなのかは分からない。

真に憂慮すべき事態が背後で進展している懸念はぬぐえない。

その一方で、アフリカ大陸のど真ん中での感染で、地域限定、近隣諸国への若干の波及は想定されていても、全世界的なアウトブレイクに繋がる要素はない。

致死性の高い感染症の流行が辿る一般的なパターンの中に納まっている。

つまり、悪化して移動できなくなり、死んじまうからそれ以上感染が広がらないという形で終息する。

感染者の移動が頻繁だったりすると、潜伏期間のうちに感染を広げてしまうからな。

人口密集地域や、交通手段が発達した大都市、国際都市での感染が恐れられるゆえんだ。

今回は、そういう要素はない(たぶん)。

感染者が増えたとしても、地域限定で収まる。

1000人とか、それ以上になったとしても、そりゃあ現地は修羅場だろうが、外に出てくる懸念は少ない。

戦闘地域で保健対策が行き届かなければ、事態は長期化する。

限定的な治療が行われ、感染症としては自然終息を待つことになる。

10回目とか11回目とかのアウトブレイクで、対応になれているはずのDRCですら、手をこまねいてみているだけだ(そうなのかあ?)。

この状況だと、年内の終息は難しいかもな。

状況が大きく変わるとすれば、戦闘が本格化して、大量の難民が移動する事態だろうな。

安全保障上の管理という観点から、現地の監視が重要になる。

犠牲者の中には、そのスタッフも含まれていたという。

「国連や保健省によると、国連コンゴ安定化派遣団(MONUSCO)のスタッフにも犠牲者が出ている。」(時事より)

やれやれ・・・。

「患者が集中している北キブ州とイトゥリ州では推定100万人以上が国内外へ逃れており、そうした難民や避難民の移動がエボラ拡散の潜在的なリスク要因になっているという。」(CNNより)

新たな難民が発生しなければ、感染の拡大はない。

戦闘地域へ戻ってきても、現地では増えるかもしれないが、外部へ拡散することはないからな。

散発的な武力衝突は、難民の帰還を抑止しているともいえる。

戦闘地域の拡大とかで、新たな難民が発生するとか、そういう事態は避けたいところだ。

100人規模の感染が、地域の情勢に大きな影響を与える可能性は小さい。

動きがあるとすれば、国際監視団が感染リスクを理由に撤退した隙を突いて、どちらかの戦闘勢力が支配を拡張しようとすることだろうな。

踏ん張りどころだろう。

紛争のレベルを現状に留めることが出来るかどうかは、アウトブレイクの終息にも影響を及ぼす。

今回は、そういう視点で見ることが大切なようだ・・・。