🐱上手の手からヘリウムが漏れる2022年10月08日 01:42

上手の手からヘリウムが漏れる


(実況中継: ファルコン 9 ロケットの打ち上げは T マイナス 30 秒で中止されました)
https://spaceflightnow.com/2022/10/06/falcon-9-galaxy-33-34-live-coverage/

「カウントダウンは木曜日の夜、T マイナス 30 秒でわずかなヘリウム漏れのために中断」

「最後の1分間を制御するFalcon 9のオンボードコンピューターが、第1段のヘリウムシステムで予想よりも高い圧力減衰率を検出した後、木曜日の夜の打ち上げの試みは自動的に中止」

「別の打ち上げの試みは、金曜日の午後 7:06 EDT (2306 GMT) までに予定」

後数時間で上がるが、もちろん、漏れが止まればの話だ。

この夏は、SLSの水素漏れの話ばかりだったが、もともと、ファルコン9では、ヘリウム周りのトラブルがつきものだった。

発射の遅れについては、天候と共に、最多の原因なのではないか(未確認)。

「顧客の衛星についてはリスクを冒していない」

「立ち止まって調査します。」

客商売の何たるかを心得ている(べつに、SLSが相乗りの探査機を客とは思っていないことを当て擦っているわけではありませんが)。

(打ち上げ日を設定する前にロケット、宇宙船の検査が進行中)
https://blogs.nasa.gov/artemis/2022/10/06/inspections-underway-for-rocket-spacecraft-before-setting-launch-date/

「この作業には、再充電するように装備され、再充電することを選択した CubeSat の充電も含まれます。」

ハリケーンイアンの接近の中、10月2日の打ち上げが強行されていれば、これらの探査機はバッテリー切れになったかも知れない(未確認)。

まあ、どうでもいいんですが。

技術的トラブルでファルコン9が飛ばないことは、初期には頻繁にあった。

最近は少なくなったとはいえ、今回のように直前にストップが掛かるのは珍しい。

上手の手から、水が漏れたわけだ。

それでも、原因究明に全力を尽くし、顧客の衛星にダメージを与えないように配慮している。

少なくとも、そういうそぶりを見せる。

スターシップの開発や、ファルコン9の1段目の回収では、発射台やドローン船で爆発炎上木っ端微塵になるのを目の当たりにしてきたが、高い成功率を誇るファルコン9は、CRS-7の空中爆発と、アモス6のスタティックファイアテストでの地上爆発程度だ(ああ、クルードラゴンの地上テストでの爆発もあったか)。

スペースXといえば、爆発炎上木っ端微塵というイメージが定着しているが(そうなのかあ?)、どっこい、それは本当にごく一部に過ぎない。

今回のスタックだって、そのままうち上げても問題のないレベルだったかもしれない。

が、それは、キビシー社内基準でハネられたわけだ。

水素と同様、ヘリウム分子も小さい。

単原子分子だから、分子量は気体水素の2倍程度だ。

何処から漏れてもおかしくはない。

幸い、不活性ガスだからな。

通常は爆発したりはしない。

CRS-7の時は、2段目の加圧用ヘリウムタンクを支えるステーが、強度不足のために振動で破壊されて吹っ飛んだ。

配管からの漏れによる事故ではない。

そういう漏れは、配管に設置されている圧力計によって探知される。

通常は、ゆっくりと漏れるから、破断して周辺をぶっ壊すことなどはない。

圧力が足りなくなって、所期の機能を果たせなくなり、ミッションが失敗に終わることはある。

打ち上げのために、湯水のごとくヘリウムを使いまくっているロケット。

今年のテック1の講習の時には、あの手この手で入手して頂き、ようやく吸うことが出来た。

上手の手から漏れるのは、水くらいにしてもらいたいな・・・。

<以下追加:10月9日AM1:20頃記>ーーーーーーーーーー

(インテルサット ギャラクシー ミッション 33/34)
https://www.elonx.cz/mise-intelsat-galaxy-33-34/

「2022/08/10 07:14(日本時間)
ピーター・メレチン:
SpaceX は、ロケットの検査にはもっと時間が必要だと言っています。新しい開始日は 10 月 9 日 01:05 CET です。開始ウィンドウは 70 分です。」

どうやら、延長戦に入っているようだ。

射点での検査で済むのかどうか。

一度燃料やヘリウムを抜いて、組み立て棟に戻す可能性もある。

無事に上がるかな・・・。

<さらに追加>ーーーーーーーーーー

(Intelsat ビデオ中継衛星 2 基が SpaceX ロケットで軌道に乗る)
https://spaceflightnow.com/2022/10/08/two-intelsat-video-relay-satellites-ride-to-orbit-on-spacex-rocket/

「これは、このブースターの 14 回目の飛行」

「SpaceX は有料の顧客向けにこれほどよく使われるブースターを打ち上げたことはなく・・・」

「2017 年に再利用ロケットの飛行を開始したとき、同社は割引を提供して、以前に飛行したブースターでの打ち上げにサインアップするように顧客を誘いました。そんなことはもうありません。」

「1 番目でも 14 番目でも同じ価格です」

「消耗品の場合は追加料金がかかります」

S社の打ち上げでは、再使用が「標準」であり、打ち上げに使われた1段目やフェアリングもまた、再利用されることが標準だ。

ペイロードの重量や、投入される軌道の関係で、使い捨てにしなければならない場合は「追加料金」だとさ!。

まあ、どうでもいいんですが。

ヘリウムがどこから漏れていたのか、その原因は何か、今回の打ち上げに於いて漏れは止まったのか、それともリスクマネージメントしてミッションに支障なしと判断し、顧客(インテルサット)を説得し、そのまま上げたのか、回収後はどうするつもりなのか、エトセエトセ・・・。

金曜日の打ち上げが、更に土曜日に延期になったのは、技術的問題ではなく、インテルサット側の決定に時間が掛かったということではないのか。

その辺りの情報は何もない。

「インテルサットの関係者は、土曜日の打ち上げに向けてブースターの性能に自信があると述べた.」

この話が、ヘリウム漏れの前なのか、後なのかも判然としないしな。

まあいい。

「ブースターの作業が土曜日に完了すると、Falcon 9 の上段はエンジンを 2 回点火し、Galaxy 33 と 34 のペイロードを、地球上空 10,000 マイル以上の遠地点、つまり高点を持つ楕円形の「準同期」トランスファー軌道に送り込みました。」

「ギャラクシー 33 が最初にロケットから分離され、5 分後にギャラクシー 34 が展開されました。」

「インテルサットは、ギャラクシー 33 および 34 宇宙船を製造したノースロップ グラマンの地上チームが、新しい衛星から最初の無線信号を受信したことを土曜日の夜遅くに確認しました。信号の取得により、エンジニアは衛星が正常で、打ち上げ後の正しい軌道にあることを確認できました。」

S社は、顧客に対して対価に見合った仕事をした。

それだけの話だ。

漏れたヘリウムの代金は、打ち上げ費用に含まれている(そういうことかあ?)。

「ブースターは大西洋に向かって落下し、ケープ カナベラルの東約 400 マイル (640 キロメートル) にあるサッカー場サイズのドローン船に目標を定めて着陸しました。」

回収されたブースター(1段目)が戻ってきたら、メンテナンス担当者は忙しいことになりそうだな・・・。

<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー

(SpaceX は、使用済みの Falcon を使用した打ち上げの割引を提供しなくなりました。ステージを破棄してペイロードを増やすには、追加料金がかかります)
https://www.elonx.cz/spacex-uz-nedava-slevu-na-starty-s-jiz-pouzitym-falconem-a-zahozeni-stupne-kvuli-zvyseni-nosnosti-je-za-priplatek/

「Falcon 9 の最初のステージの最初の再利用は、SES-10 ミッション中に 2017 年 3 月に行われました。当時、標準的な Falcon 9 の商用ローンチの価格は 6,200 万ドルでしたが、SES は最初の「モルモット」として約 30% 値引きされました。2018 年 5 月、SpaceX のトップであるイーロン マスクは次のように述べています。、すでに使用済みの第 1 ステージを備えた Falcon 9 の商用発売価格は、20% の割引である約 5000 万ドルに引き下げられました。」

「2018 年には全ミッションの半分以上がすでに第 1 段が使用された状態で飛行し、翌年にはほぼ 70%、2020 年には 80% を超え、昨年は 93% を超えました。」

「SpaceXはすでに154回の成功したミッションを連続して獲得」

「現在、SpaceX は新しいステージと使用済みのステージを区別せず、同じ金額を請求している」

現在の情報のネタ元は、上記で引用したスペースフライトナウなので、目新しい話はあまりない。

「Falcon 9 の基本的な商用価格は現在 6,700 万ドルです (今年の 3 月は高インフレのため、より高価になりました)。」

「例えば、静止衛星を通常よりも高い移行軌道に引き上げることができ、衛星が最終静止軌道に移動して商用運用を開始するまでの時間を短縮することができます。Intelsat は、Galaxy 31/32 衛星を使用した 11 月の Falcon 9 ミッションでこのオプションを使用する予定です。」

うーん、G31と32の場合は、衛星の重量が嵩んだからというのが本当のところではないのか。

米軍とNASAの有人ミッションの場合、新品が好まれる傾向は変わらないが、無人探査機の場合は既に再使用品が多く用いられているようだ。

もう、再使用ロケットは標準としての地位を確立したと言っても過言ではない。

来年になれば、全世界で打ち上げられるロケットの過半数は再使用ロケット(1段目の部分的再使用)になるだろう(未確認:でも、たぶん、そうなる)。

エレクトロンも、再使用するかもしれないしな。

アリアン6も、やるやると言っているようだが、例によってエリックバーガーが辛辣な記事を上げている。

(ロケットレポート: BE-4 エンジンが火を噴く。デルタ IV ヘビーがショーを開催)
https://arstechnica.com/science/2022/09/rocket-report-be-4-engine-breathes-fire-delta-iv-heavy-puts-on-a-show/

「Ariane 6 — すでに再利用可能ですか?」

「「すでに再利用可能」という小見出しの下で、ArianeGroup は液体サイドマウント ブースターを開発する契約を結んでおり、再利用可能な上段「スージー」の契約を求めていると述べています。」

「これらのアップグレードは、設計図から外れるとしても飛行には何年もかかります。要するに、この小見出しについては、ベテリッジの法則が確実に適用されるということです。」

(ベテリッジの見出しの法則)
https://en.wikipedia.org/wiki/Betteridge's_law_of_headlines

「出版社が答えがイエスであると確信していた場合、彼らはそれを主張として提示したであろうという仮定に基づいています。それを質問として提示することによって、彼らはそれが正しいかどうかについて責任を負いません。」

ワケワカワカだが、要するに「・・・すでに再利用可能ですか?」と疑問符がついて時点で、自動的に「おそらくそうではありません...」という答えになる。

ULAのバルカンロケットについては、そもそも飛ぶかどうかが問題なわけで(そうなのかあ?)、再使用どころの話ではない(回収するのはエンジンユニットだけだしな)。

まあ、どうでもいいんですが。

最も忠実にファルコンの後を追っているのは、ひょっとしたら中国かも知れない。

政治体制の違いから、どうしても色眼鏡で見がちだが、優れたものを評価し、学ぶ姿勢はしっかりある(パクリかも知れないけど)。

欧州や我が国は、妙なプライドがあるのか、独自技術に拘るからな。

あるいは、丸ごと買って来るとか。

再使用ロケットは、試験段階から実用段階に確実に移行したと言えよう。

コスト的に見合うかどうかについて、もう、誰も疑念は抱かないだろう。

我が国や欧州は、これから試験機を飛ばして検討するようだがな。

のんびりやってくれ・・・。

🐱キャップストーン:スピンから復旧2022年10月08日 22:54

キャップストーン:スピンから復旧


(CAPSTONEチームが宇宙船のスピンを止め、回復へのハードルをクリア)
https://blogs.nasa.gov/artemis/2022/10/07/capstone-team-stops-spacecraft-spin-clearing-hurdle-to-recovery/

「宇宙船の 8 つのスラスターの 1 つのバルブ関連の問題であることを示唆しています。バルブが部分的に開いているということは、推進システムが加圧されるたびにスラスターが推力を生み出すことを意味していました。」

なんてこった!。

「復旧コマンドは金曜日の朝に実行されました。CAPSTONE からの最初のテレメトリと観測データは、宇宙船がスピンを停止し、完全な 3 軸姿勢制御を取り戻した」

「ソーラー アレイを太陽に向け、アンテナの向きを調整して、地球へのより良いデータ接続を提供」

リンク先の運用チームのページも見てみる。

(CAPSTONE ミッション オペレーション アップデート: 初期復旧成功)
https://advancedspace.com/capstone-mission-recovery-success-update/

「ミッション チームは車両に対して複数のテストを実施し、広範なテレメトリとシミュレーション データを評価してから、車両の完全な 3 軸制御の回復を試みるための計画を作成」

「この回復シーケンスは、昨日 (木曜日) に宇宙船にアップロードされ、今朝 (10/7 金曜日) に実行されました。」

「今後数日間、宇宙船の状態が監視され、チームは宇宙船の操作手順に対するその後の変更を評価して、バルブが部分的に開いたままになっている可能性がある場合でも、今後の重要なイベントを実施できるようにします。並行して、ミッションチームは、将来の推進操作のリスクをさらに軽減するために、このバルブ関連の問題の可能な修正を設計するために作業します。」

バルブの(部分的)解放が修正されたかどうか、その間に失われた燃料はどのくらいなのか。

今後予定されている複数回の軌道修正は、予定通り滞りなく行われるのか。

最終的な軌道投入(11月13日予定)、その後の軌道維持に必要な燃料は残っているのか。

太陽電池による充電と高利得アンテナによる通信が復旧したとあるが、それ以外の探査機の状態は大丈夫なのか(バルブがイカレテることは分かってるけど)。

つまり、今回のように、軌道修正の度に次々とバルブの不良が発生し、同じ様に想定外のスピンが起こり、その度に搭載燃料が失われ、軌道変更の再設計と不良バルブを使わずに姿勢制御を回復する手順を構築したり、運を天に委ねるような復旧をしなくていいのかどうかなわけだ。

バルブの解放が起こった原因は不明だ。

もちろん、前回の軌道修正の際に開いた時に、閉じるべきバルブが完全に閉じなかったからだろう(テキトーです)。

ひょっとしたら、開くべきでないバルブが開いちまったとか(そんなあ!)。

修正が上手くいったことは喜ばしいが、状況はそれ以上でもそれ以下でもない。

首筋をなでながらの、ヒヤヒヤもんのミッションは続く。

もう、満身創痍どころか、飛んでいるのが不思議な状態だな(そうなのかあ?)。

予定では、10月中旬(もうすぐです!)に、次の軌道修正が行われるはずだ。

一応、オンコースということだったが、バルブの解放による加速が加わったことで、軌道もビミョーにズレているに違いない(未確認)。

まあ、どうでもいいんですが。

今回のトラブルとその復旧によるダメージ(復旧の際にも、余分な燃料を使ってるからな)が評価されたとしても、その全てが公開されるとは限らない。

キャップストーンが飛んでいる軌道は、安上がりに月軌道に物資を送る際の美味しい軌道なわけだ。

時間は掛かるが、重量物を運ぶ際にはお得な船便のようなもんか。

そのルートを独占できれば、一儲けできるかもしれない。

詳細は明かされない可能性もある。

100トンの物資を送り込むと豪語しているスターシップにしても、そのためには地球低軌道で8回も給油しなければならないわけで、月軌道にものを送るのは一筋縄ではないのだ。

うーん、なんか、生臭い話になってきたな・・・。