930タルガの研究(その9)「オープン」2013年04月10日 02:15

930タルガの研究(その9)「オープン」
930タルガの研究(その9)「オープン」


タルガにとって、オープンであることは重要だ。

ちなみに、「オープンカー」というのは和製英語らしいが、浮沈子は日本男児なので、かまわず使わせていただく(ナイターとかオートバイとか・・・)

(オープンカー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC

(和製英語:この中には、「オープンカー」はありません)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%A3%BD%E8%8B%B1%E8%AA%9E#.E4.B8.80.E8.88.AC.E8.AA.9E.E5.BD.99.E3.81.AE.E4.BE.8B

まあ、どうでもいいんですが。

タルガトップについては、このブログでも既に触れた。

(タルガ)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2013/03/05/6737420

この中に出てくる「ノーマンズ・ランド」(同名の別の映画あり)は、まだ観ていない。

クルマにとって、屋根がないことは、かつては普通のことであった。

元々、屋根のない乗り物だった。

(自動車:歴史)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A#.E6.AD.B4.E5.8F.B2

(キュニョーの砲車:1769年だと!)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%A0%B2%E8%BB%8A

屋根のない乗り物に、あとから屋根を付けたわけだな。

まあいい。

ここで取り上げたいのは、ポルシェのオープンカーのことである(ま、当然ですが)。

ポルシェのオープンタイプとして初めて登場したのは、もちろん356のプロトタイプ1号車である。

(ポルシェ・356:356.001)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB356#356.001

「アルミボディーの2シーターでロードスター型プロトタイプを試作した。」とある。

つまり、まずは屋根のない、ロードスターが嚆矢であったわけだ。

カブリオレの登場が1951年である。

つまり、356の時代は、ロードスターが最初(試作車ですが)で、カブリオレが後から出てきたのだ。

量産車としてのスピードスターの登場は、1954年のポルシェ356/1500 、ポルシェ356/1500スーパーということになる。

1959年には、スピードスターがコンパーチブルDに移行している。

同年発表された「356B型のバリエーションはクーペとカブリオレ、ロードスターの3種。カブリオレはリア窓上にファスナーを装備し開閉可能とした。」とある。

1961年モデルには、バリエーションとしてカルマン製カブリオレにハードトップを固定したカルマン・ハードトップが少数生産された。

1963年7月、356C型にマイナーチェンジした際に、カブリオレのリア窓上のファスナーが2つになった。

ウィキペディアの記事を見てきただけでも分かるように、911以前の356においてすら、オープンモデルは、クーペに劣らない位置付けとなっていることが分かる。

さて、911については、同じウィキをなぞるのもなんなので、プレステージの資料を見よう。

(空冷ポルシェのモデル別生産台数)
http://www.prestige-tokyo.jp/air-cooled3.html

せっかく生産台数が出ているので、数字で追ってみよう。

1965-68 911タルガ(L含む):1293台
1967-68 911Sタルガ:1160台
1968 911Tタルガ:521台
ナローショートボディ合計2974台(全20191台中14.7%)

1969 911Sタルガ:614台
1969 911Tタルガ:1282台
1969 911Eタルガ:858台
1970-71 911Tタルガ:6021台
1970-71 911Eタルガ:1868台
1970-71 911Sタルガ:1517台
1972-73 911Tタルガ:3064台
1972-73 911Eタルガ:1916台
1972-73 911Sタルガ:1914台
ナローロングボディ合計19054台(全59862台中31.8%)

1974-75 911タルガ:4108台
1974-75 911Sタルガ:1164台
1974-75 911カレラタルガ:630台
1975 911Sタルガ US:1517台
1976-77 911タルガ:3300台
1976-77 911タルガ US:4922台
1976-77 911カレラ3.0タルガ:1125台
930初期型合計16766台(全41471台中40.4%)

1978-79 911SCタルガ:5048台
1978-79 911SCタルガ US:4544台
1981-83 911SCタルガ:4692台
1981-83 911SCタルガ US:5263台
1983 911SCカブリオレ(204馬力):2406台
1983 911SCカブリオレ(180馬力):1781台
930中期型合計23834台(全60597台中39.3%)

1984-86 911カレラタルガ:4662台
1984-86 911カレラカブリオレ:5776台
1984-86 911カレラタルガ JP:207台
1984-86 911カレラカブリオレ JP:162台
1984-86 911カレラタルガ US:6178台
1984-86 911カレラカブリオレ US:4227台
1987-89 911カレラタルガ:3698台
1987-89 911カレラカブリオレ:5252台
1987-89 911カレラタルガ JP:165台
1987-89 911カレラカブリオレ JP:166台
1987-89 911カレラタルガ US:4592台
1987-89 911カレラカブリオレ US:6130台
930後期型合計41215台(全78094台中52.8%)

ああ疲れた!(ターボまでは集計してません:オープンの割合は少ないようです)。

暇な方は、検算してみてください。

なんと、ビッグバンパー後期型(カレラシリーズですな)では、全体の半数以上をオープンモデルが占めている。

我が国ではマイナーなオープンポルシェだが、どうしてどうして、ワールドワイドでは、むしろクーペよりも売れていた時期があったわけだ。

930全体でみても、全180162台中81815台と、実に45.4%を占める。

ビッグバンパーの、2台に1台はオープンであった!。

なんだか嬉しいような、がっかりしたような(希少価値ないじゃん!)、複雑な気分である。

930タルガの研究(その10)「続・オープン」2013年04月10日 22:08

930タルガの研究(その10)「続・オープン」
930タルガの研究(その10)「続・オープン」


夕べは、遅くまで電卓を叩いていたので、今日は1日辛かった。

自業自得である。

しかし、そのおかげで、あることに気付いた!。

ポルシェ911のオープンタイプ(タルガとカブリオレとスピードスター)は、エンジンパワーにおいて、クーペタイプと同等の設定になっている。

(空冷ポルシェのモデル別生産台数)
http://www.prestige-tokyo.jp/air-cooled3.html

これは、現代のポルシェにおいても同じだ。991タイプの911の各モデルには、カブリオレが設定されているが、それぞれクーペと同じ出力のエンジンが搭載されている。

ほーっ、そういうことなのか。

しかしである、ボクスターとケイマンには、この方程式は適用されない。ボクスターは、同タイプのケイマンより10馬力落とされている(ボクスターのオーナーとしては、納得いかない気分である・・・)。

(ポルシェジャパンのホームページ)
http://www.porsche.com/japan/

ほぼ同じ車両重量に対して、馬力で差を付けてくるなんて、オープンを馬鹿にしてらあ!。

まあいい。

この辺は、930タルガの研究というタイトルにそぐわないので、そのうちじっくりと取り上げたい。

で、オープン911とクーペとの馬力に差がないということは、いくつかの理由が考えられる。

① 2種類の馬力のエンジンを作るのが、面倒くさいから。
② ボディ剛性が十分あるので、オープンでもイケテるから。
③ クーペはどうせエンジンをチューニングするから。

この件についてポルシェA.G.が、公式の見解を表明したことがあるかどうかは知らない。

最近のカーボンボディのスポーツカーならいざ知らず、オープンボディが柔なのは子供でも分かる。段差を乗り越えたり、うねった路面を走ると、ボディがブルンブルンして楽しい!(03ボクスターはそんなことはない)。

幌を閉めていると、ミシミシと音がするので、自然と開けられる日は開けるようになる(←そういうことか?)。

だから、普通はオープンタイプのパワーは、屋根付きに対して控えめに設定されているわけだな。

しかし、オープン911について、浮沈子は②が正解だと思っている。

(ポルシェ・356:356/2)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB356#356.2F2

「プラットホーム型シャーシは、補強が不要な程の強度を備えており、カブリオレでも追加補強はない。」とある。

356と901(911)は、違うんじゃないの?。

確かにその通りなのだが、ここに面白いデータがある。

(プリズム11の乗り物(ポルシェ資料館):ポルシェ911:1983年)
http://homepage2.nifty.com/prism11/porsche9111980sdatabase.htm#1983

表の右の方に、0-100km加速と最高速が出ているが、同じ馬力で車重が軽いクーペの方が、車重が大きいカブリオレより遅い。

まあ、これはタイヤサイズとかいろいろ理由はあるかもしれないが、オープン乗りとしては痛快である!。

良く見ると、シャシーが違うような気もする。

まあ、どうでもいいんですが。

要するに、加速データとか最高速を見る限り、クーペとオープンに性能差はないということだ。

そして、1984年には、3.2リットル930/64型エンジンに対応するため、「1974年以来不変だった肉厚0.75mmシャシフロアパネルのプレス型を一新し肉厚1.0mmへ変更」とある(85年モデルから適用)。

そう、356の記述にある「プラットフォーム型シャーシ」が、911の強度上重要な役割を果たしており、その強化において「シャシフロアパネル」(と、エンジンバルクヘッド)の鋼板の肉厚を増すことによってその目的を果たそうとしたということは、356とナローから930までの911の骨格構造が似ていたことの証である。

だから、356においてカブリオレでも補強がいらない強度が得られていたのなら、911においても、オープンモデルの強度は十分であり(タルガには、ぶっといロールバーまで付いているし)、したがって、同等のパワーに十分耐えられたと考えられる。

この系譜が、モノコック構造を本格的に取り入れた964以降も堅持され、今日に至るまで続いているのではあるまいか。

実際、83タルガに乗ってみた実感としては、オープンであることのネガをほとんど感じさせない十分な堅牢さである。

前回は、「数」の論理でオープンポルシェをアピールしたのだが、今回は「質」の論理でアピールしてみた。

まあ、もちろん、当然だが、クーペよりオープンモデルの方が、少なくとも新車価格は高価であるわけだし・・・。

930タルガの研究(その11)「続・謎のエンジン」2013年04月10日 23:58

930タルガの研究(その11)「続・謎のエンジン」
930タルガの研究(その11)「続・謎のエンジン」


さっき、(その10)を書いている時に、気が付いたことがある。

(プリズム11の乗り物(ポルシェ資料館):原動機 水平対向6気筒:3.2空冷SOHC)
http://homepage2.nifty.com/prism11/porschef6enginedatabase.htm#32acsohc

「原動機形式:930/64」とある。

ははあ、83タルガを買った横浜オートで言っていた「64エンジン」というのは、この「930/64」のことなのかもしれない(M64ってこたぁ、ありっこねえよなぁ!)。

「内径×行程=排気量:φ95.0×74.4=3164.2
圧縮(比):9.5
燃料供給:ボッシュLジェトロニック
出力:215PS/5800rpm
トルク:26.0kgm/4800rpm」とある。

ひょっとして、このエンジンに換装したのか。

それなら、排気量が3.2リットルというのも納得がいく。

空冷ファンのSC2.7リットルのプレートが気になるけど。

まあいい。

点検から戻ってくれば、明らかになる。

ところで、引用したエンジンのページを見ていて、面白いことに気付いた(このパターン、多くね?)。

「2.0空冷SOHC:φ80.0×66.0(ボア×ストローク:以下、同じ)
2.2空冷SOHC:φ84.0×66.0
2.4空冷SOHC:φ84.0×70.4
2.7空冷SOHC:φ90.0×70.4
3.0空冷SOHC:φ95.0×70.4
3.2空冷SOHC:φ95.0×74.4」とある。

ボア(内径)とストローク(行程)が、ほぼ交互に拡大されている。

エンジンのことは詳しくないのだが、高回転型のエンジンは、ショートストロークだと聞いている。

ポルシェのエンジンは、一貫してショートストロークだ。

ナローの時代(2.0から2.4リッター)は、「シリンダーはTがクローマル(鋳鉄一体+クロムメッキ)、それ以外はバイラル(鋳鉄ライナー+アルミフィン)」であったが、ビッグバンパー(2.7リッター以上)になると、「シリンダーはニカジル(フィン付きアルミ鋳物シリンダー内側にニッケルシリコン合金メッキ)で薄肉を実現しボアφ90を可能とした。程なく安価なアルシル(ライナーレスアルミ鋳物シリンダー+鉄メッキピストン)に切り替えた」とある。

元々、エンジンを設計したフェルディナント・ピエヒは、かなり余裕をみてブロックを設計したといわれている。

(ポルシェ・911:Oシリーズ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB911#O.E3.82.B7.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.BA

「排気量は大きなマージンを取りかつ手の届きやすい価格にするため排気量1,991ccになったものの、後の市場の要求次第で2.7Lくらいまで拡大できるようになっていた。」とある。

実際に2.7リッターにしたときには、「917からフィードバックされた技術でアルミニウムシリンダーにニッケルとシリコンの化合物を付着させた「ニカシル」シリンダーによりこの大径ボアを実現している。」とある(その後、アルシルになったのは前出のとおり)。

911カレラRS2.7(1973年限定生産:いわゆる「ナナサンカレラ」)のときだな。

ポルシェ乗りの憧れ、911の中の911、究極の選択である。

「カレラ」といえば、このクルマのことであり、他は後光におすがりしているだけである(74カレラRS3.0もあるが、別格!)。

このクルマを目の前にしているだけで、911フリークはヨダレたらたらで、ご飯3杯はいけるだろう!!!。

浮沈子は、あんまり気にならない。縁(円)がないから(なんちゃって!)。

エンジンの話に戻る。

引用した、ボアの拡大とストロークの拡大が交互に行われているのは、ショートストロークに拘っただけでは、もちろん、ない。

コンロッドがシリンダーに当らないように、内径を拡大しておかないとストロークが伸ばせないわけだな(クランク側を小さくするという手もあるらしいが)。

排気量の拡大の際には、確かに内径の拡大の後に、ストロークが伸びていることが分かる。

理に適っているわけだ。

まあ、しかし、何だな、911って、毎年のように改良を続けていて、そんでもって50年も続いているんだから、薀蓄を傾ける対象としては、相手にとって不足はない。

これでもまだ、930までに留めているからいいようなものの、964以降に足を踏み入れると際限なく続いていきそうである。

ターボは敢えて無視しているが、これはこれで、一家を成している。

レーシングマシンの世界まで考えると、もう、頭が爆発する!。

今回で「930タルガの研究」は打ち止めにするが、気が向いたら、また書くかもしれない。

(ポルシェのエンジン一覧:空冷水平対向6気筒:←これだけで32種類だと!)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E7.A9.BA.E5.86.B7.E6.B0.B4.E5.B9.B3.E5.AF.BE.E5.90.916.E6.B0.97.E7.AD.92

良く見ると、68度バンクのカレラGTのV型10気筒エンジンはないなあ!。