恐怖の顔 ― 2017年02月13日 03:41
恐怖の顔
ちょっと食傷気味になっている米国の入国規制。
厳密には、移民規制と分けなければならないんだろうが、浮沈子の中ではごっちゃになっている。
ロイターが、少し詳しい記事を載せている。
(コラム:実は新しくない、トランプ大統領の入国制限令)
http://jp.reuters.com/article/vanburen-immigration-idJPKBN15I0E6?sp=true
「「これは私たち(の国)ではない」と言う人々は、考え直した方がいい。残念ながら、私たちの国は以前から変わっていないのだ。」
衝撃的な書き出しだが、その理由は読めば分かる。
「諸外国と比較して、米国がきわめて少数の難民しか受け入れていないという事実」
「年間の難民受け入れ人数に上限を設定」
「2016年度については8万5000人」
「2006年に遡ると、当時の上限は7万人(実際に認められたのは5万人以下)」
「1980年以来、米国が受け入れてきた難民は合計200万人に満たず・・・」
「ドイツが2016年にさまざまな国から受け入れた難民は30万人、前年の2015年には100万人近くを受け入れている。」
「特定の国について年間の移民数が決まっていることは、事実上の禁止措置となっている。」
「フィリピン人やメキシコ人は、グリーンカード取得までに24年間待たされるに等しい制限に直面」
「順番が来るまでに申請者が死亡してしまう例も珍しくない。」
このほか、様々な手続き上の実態が書かれている。
そういうことは、どこの国にもあるし、米国が特殊なわけではない。
浮沈子が注目したのは、この記事の著者が指摘した以下のくだりだ。
「だが、移民に関するトランプ氏の大統領令を通じた行動をめぐって最も注目すべき側面は、この事態全体の原動力となっている要因、すなわち「恐怖」である。」
「何も行動せずに誰かが殺されたらどうするのか」
「国民の恐怖を保ち、政府は国土を保護する任務を果たしている、という政治的な神話を維持することが肝心なのだ。トランプ大統領は、オバマ氏やブッシュ氏と同様に、このことを理解している。」
「多くの米国民は外国人を恐がっており、トランプ氏が自分たちに与えてくれるものを求めている。」
「これまでも常にそうだった。残念ながら、トランプ時代だからといって、根本的な部分では特に変わったことはほとんどないのである。」
テロは、その語義から言っても、恐怖と無縁ではない。
著者は「9.11の幻影」というが、それが植え付けた恐怖は、米国民の中に深く深く刻みつけられている。
大昔、劇場で地獄の黙示録を観た。
(映画『地獄の黙示録』のせりふで“恐怖”の姿を浮き彫りにする ―せりふで遊ぶ(その22)―)
http://tamakero.seesaa.net/article/417015247.html
「恐怖。恐怖には顔がある。それを友とせねばならん。恐怖とそれに怯える心を友とせよ。そうしなければ、この二つは恐るべき敵となる。真に恐るべき敵だ」(Horror... Horror has a face... and you must make a friend of horror. Horror and moral terror are your friends. If they are not, then they are enemies to be feared. They are truly enemies!:記事中のリンク先より)
吹き替えは、原文に忠実ということだな。
ブログの記事では、刃物の恐怖とされているが、まあ、そういう見方もあるという程度か。
浮沈子は、もっと心の奥深くに潜む人間の本質的な恐怖だと感じている。
死に対する恐怖、傷つけられ、蹂躙される恐怖だ。
米国、いや、世界は恐怖とそれに怯える心を友とすることができるんだろうか?。
浮沈子には無理だ。
恐怖に怯えるだけだ。
そして、己の心の中で、猛獣を飼い太らせ、真の敵にしてしまう。
「9.11の幻影は、これまでにも何かを正当化するために利用されてきたが(容疑者に対する拷問やグアンタナモ収容所の維持、空港での過剰な保安検査)、その頃よりもずっと過去に追いやられていたにもかかわらず、今回の大統領令は再びそれを呼び起こしている。」
米国の深い深い闇を覗く思いだ。
もう一つ記事を読んだ。
(トランプの入国制限、「イスラム教徒」の本音 トランプ支持だった青年も困惑)
http://toyokeizai.net/articles/-/158046
「米国はずっと、より高みを目指してやってきたし、歴代の大統領もそのスタンダードを維持することに力を注いできた」
「米国はこれまで難民・移民を受け入れてきた国であり、それが変わることはありえない」
「そんな反米国人的なことがまかり通るわけはない。そんな人種差別的なことが起こるわけがないと考えていた」
「ところが最近、南部のサウスカロライナ州を訪れた際、カーンさんは自ら人種差別を体験した。」
一方、こんなことも書いてある。
「ジャイナバさんの店でイスラム教徒を侮辱した男性はその後戻ってきて、謝罪をした。そのとき、彼女は確信した。米国は今でもきちんとした国であり、一般的な市民はまっとうな道徳心を持って生きていると。」
「今回の大統領令は間違いなくイスラム教徒追放令だが、米国はこれからもずっとイスラム教徒にとって安全な避難場所に変わりない、と考えている。」
「トランプ大統領は今回の件で、とても多くの人を『のけ者』にしてしまった。彼は宗教のことを理解しようともせず、自分のゲームをプレーしようとしている」
「何かを起こせば、必ずそれに対するリアクションがある。イスラム教徒追放令を出しておいて、その対象となっている人たちが反応しないわけがない」
「米国に住むイスラム教徒にとってのこれからの課題は、いかに正しい形で米国に解け込むか、だと話す。それによって、イスラム教は平和と平等を尊重する宗教であるとの認識を広める。」
「トランプ大統領は、反トランプのデモ隊が掲げるスローガンを取り入れたほうがいいのかもしれない。「共に強くなろう」」
いい記事なんだがな。
ちゃんと取材してるし、ステレオタイプな反応ではない。
建設的で、前向きで、性善説で、楽観的だ。
実に米国的で、健全な記事だと感じる。
しかし、なんか嘘臭さが漂う。
米国特有の、何とも言えない虚無的な雰囲気・・・。
その一方で、初出のコラムの著者の、暗く、鬱屈した記事に、浮沈子はよりリアリティを感じるのだ。
恐怖の持つ顔と、どう向き合うのか。
移民政策や難民受け入れについては、大きなことは言えない我が国も、そろそろ真剣に考えておかなくっちゃな。
最近読んだ、とっておきの記事がある。
(9.11は米外交政策の必然的結果、首謀者がオバマ氏に手紙)
http://www.afpbb.com/articles/-/3117235?cx_part=topstory
「9月11日にお前たちに戦争を仕掛けたのは、われわれではない。お前と、われわれの土地にいるお前たちの独裁者だ」
「アッラー(神)が、9月11日の同時多発攻撃の実行、資本主義経済の破壊、お前たちに対する不意打ち、さらには民主主義と自由という、お前たちのかねての要求が全くの偽善だということをさらけ出す手助けをして下さった」
「さらに、ベトナム(戦争)や広島と長崎への原爆投下など、米国が行った「残忍で野蛮な虐殺」について数多くの批判を列挙。」
「同時多発攻撃の首謀者とされるモハメド被告には死刑判決が下される可能性があるが、同被告は死ぬことは怖くないと話している。」
(ハリド・シェイク・モハメド)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%8F%E3%83%A1%E3%83%89
「16歳でムスリム同胞団に参加、直後にパキスタンに移った。」
「その後、勉学のためにアメリカに渡る。ノースカロライナ州の大学で機械工学の学位を取得するとアフガニスタンに移った。アメリカでの幾つかの屈辱的な経験がハリド・シェイク・モハメドをテロリストに向わせたとされる。」
あーあ・・・。
モハメド被告が恐怖とそれに怯える心を友にしていることは確かなようだ・・・。
ちょっと食傷気味になっている米国の入国規制。
厳密には、移民規制と分けなければならないんだろうが、浮沈子の中ではごっちゃになっている。
ロイターが、少し詳しい記事を載せている。
(コラム:実は新しくない、トランプ大統領の入国制限令)
http://jp.reuters.com/article/vanburen-immigration-idJPKBN15I0E6?sp=true
「「これは私たち(の国)ではない」と言う人々は、考え直した方がいい。残念ながら、私たちの国は以前から変わっていないのだ。」
衝撃的な書き出しだが、その理由は読めば分かる。
「諸外国と比較して、米国がきわめて少数の難民しか受け入れていないという事実」
「年間の難民受け入れ人数に上限を設定」
「2016年度については8万5000人」
「2006年に遡ると、当時の上限は7万人(実際に認められたのは5万人以下)」
「1980年以来、米国が受け入れてきた難民は合計200万人に満たず・・・」
「ドイツが2016年にさまざまな国から受け入れた難民は30万人、前年の2015年には100万人近くを受け入れている。」
「特定の国について年間の移民数が決まっていることは、事実上の禁止措置となっている。」
「フィリピン人やメキシコ人は、グリーンカード取得までに24年間待たされるに等しい制限に直面」
「順番が来るまでに申請者が死亡してしまう例も珍しくない。」
このほか、様々な手続き上の実態が書かれている。
そういうことは、どこの国にもあるし、米国が特殊なわけではない。
浮沈子が注目したのは、この記事の著者が指摘した以下のくだりだ。
「だが、移民に関するトランプ氏の大統領令を通じた行動をめぐって最も注目すべき側面は、この事態全体の原動力となっている要因、すなわち「恐怖」である。」
「何も行動せずに誰かが殺されたらどうするのか」
「国民の恐怖を保ち、政府は国土を保護する任務を果たしている、という政治的な神話を維持することが肝心なのだ。トランプ大統領は、オバマ氏やブッシュ氏と同様に、このことを理解している。」
「多くの米国民は外国人を恐がっており、トランプ氏が自分たちに与えてくれるものを求めている。」
「これまでも常にそうだった。残念ながら、トランプ時代だからといって、根本的な部分では特に変わったことはほとんどないのである。」
テロは、その語義から言っても、恐怖と無縁ではない。
著者は「9.11の幻影」というが、それが植え付けた恐怖は、米国民の中に深く深く刻みつけられている。
大昔、劇場で地獄の黙示録を観た。
(映画『地獄の黙示録』のせりふで“恐怖”の姿を浮き彫りにする ―せりふで遊ぶ(その22)―)
http://tamakero.seesaa.net/article/417015247.html
「恐怖。恐怖には顔がある。それを友とせねばならん。恐怖とそれに怯える心を友とせよ。そうしなければ、この二つは恐るべき敵となる。真に恐るべき敵だ」(Horror... Horror has a face... and you must make a friend of horror. Horror and moral terror are your friends. If they are not, then they are enemies to be feared. They are truly enemies!:記事中のリンク先より)
吹き替えは、原文に忠実ということだな。
ブログの記事では、刃物の恐怖とされているが、まあ、そういう見方もあるという程度か。
浮沈子は、もっと心の奥深くに潜む人間の本質的な恐怖だと感じている。
死に対する恐怖、傷つけられ、蹂躙される恐怖だ。
米国、いや、世界は恐怖とそれに怯える心を友とすることができるんだろうか?。
浮沈子には無理だ。
恐怖に怯えるだけだ。
そして、己の心の中で、猛獣を飼い太らせ、真の敵にしてしまう。
「9.11の幻影は、これまでにも何かを正当化するために利用されてきたが(容疑者に対する拷問やグアンタナモ収容所の維持、空港での過剰な保安検査)、その頃よりもずっと過去に追いやられていたにもかかわらず、今回の大統領令は再びそれを呼び起こしている。」
米国の深い深い闇を覗く思いだ。
もう一つ記事を読んだ。
(トランプの入国制限、「イスラム教徒」の本音 トランプ支持だった青年も困惑)
http://toyokeizai.net/articles/-/158046
「米国はずっと、より高みを目指してやってきたし、歴代の大統領もそのスタンダードを維持することに力を注いできた」
「米国はこれまで難民・移民を受け入れてきた国であり、それが変わることはありえない」
「そんな反米国人的なことがまかり通るわけはない。そんな人種差別的なことが起こるわけがないと考えていた」
「ところが最近、南部のサウスカロライナ州を訪れた際、カーンさんは自ら人種差別を体験した。」
一方、こんなことも書いてある。
「ジャイナバさんの店でイスラム教徒を侮辱した男性はその後戻ってきて、謝罪をした。そのとき、彼女は確信した。米国は今でもきちんとした国であり、一般的な市民はまっとうな道徳心を持って生きていると。」
「今回の大統領令は間違いなくイスラム教徒追放令だが、米国はこれからもずっとイスラム教徒にとって安全な避難場所に変わりない、と考えている。」
「トランプ大統領は今回の件で、とても多くの人を『のけ者』にしてしまった。彼は宗教のことを理解しようともせず、自分のゲームをプレーしようとしている」
「何かを起こせば、必ずそれに対するリアクションがある。イスラム教徒追放令を出しておいて、その対象となっている人たちが反応しないわけがない」
「米国に住むイスラム教徒にとってのこれからの課題は、いかに正しい形で米国に解け込むか、だと話す。それによって、イスラム教は平和と平等を尊重する宗教であるとの認識を広める。」
「トランプ大統領は、反トランプのデモ隊が掲げるスローガンを取り入れたほうがいいのかもしれない。「共に強くなろう」」
いい記事なんだがな。
ちゃんと取材してるし、ステレオタイプな反応ではない。
建設的で、前向きで、性善説で、楽観的だ。
実に米国的で、健全な記事だと感じる。
しかし、なんか嘘臭さが漂う。
米国特有の、何とも言えない虚無的な雰囲気・・・。
その一方で、初出のコラムの著者の、暗く、鬱屈した記事に、浮沈子はよりリアリティを感じるのだ。
恐怖の持つ顔と、どう向き合うのか。
移民政策や難民受け入れについては、大きなことは言えない我が国も、そろそろ真剣に考えておかなくっちゃな。
最近読んだ、とっておきの記事がある。
(9.11は米外交政策の必然的結果、首謀者がオバマ氏に手紙)
http://www.afpbb.com/articles/-/3117235?cx_part=topstory
「9月11日にお前たちに戦争を仕掛けたのは、われわれではない。お前と、われわれの土地にいるお前たちの独裁者だ」
「アッラー(神)が、9月11日の同時多発攻撃の実行、資本主義経済の破壊、お前たちに対する不意打ち、さらには民主主義と自由という、お前たちのかねての要求が全くの偽善だということをさらけ出す手助けをして下さった」
「さらに、ベトナム(戦争)や広島と長崎への原爆投下など、米国が行った「残忍で野蛮な虐殺」について数多くの批判を列挙。」
「同時多発攻撃の首謀者とされるモハメド被告には死刑判決が下される可能性があるが、同被告は死ぬことは怖くないと話している。」
(ハリド・シェイク・モハメド)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%8F%E3%83%A1%E3%83%89
「16歳でムスリム同胞団に参加、直後にパキスタンに移った。」
「その後、勉学のためにアメリカに渡る。ノースカロライナ州の大学で機械工学の学位を取得するとアフガニスタンに移った。アメリカでの幾つかの屈辱的な経験がハリド・シェイク・モハメドをテロリストに向わせたとされる。」
あーあ・・・。
モハメド被告が恐怖とそれに怯える心を友にしていることは確かなようだ・・・。
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