レーシングポルシェの系譜(その15)9562013年11月12日 18:59

レーシングポルシェの系譜(その15)956
レーシングポルシェの系譜(その15)956


917が東の横綱だとすると、西の横綱は、何といっても956で決まりだな。

(横綱の東西)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1014454200

「・・・以来東が優位となりました。番付も東の方が優位です。」

まあ、どうでもいいんですが(いきなりかよ!)。

浮沈子は、917こそ、レーシングポルシェの金字塔と信じて疑わない。

その圧倒的な戦闘力は、当時の他のメーカーをして顔色を失わせるものであったと思われる。

ルマンだけではない。

カンナムでは、常勝マクラーレンを叩きのめし、ワークスから撤退させるほどであった。

絶対的な性能も、文字通り群を抜いていたが、各メーカーが鎬を削る戦いをしているレースの世界で、一頭地を抜く実力を持っていたといっていい。

そんなポルシェが、1983年(なんと、83タルガが作られた年)に、またまた歴史に残るクルマを作り上げてきた。

956である。

(ポルシェ・956)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB956

「ポルシェ・956(Porsche956)は、1982年に発効したFIAの新規定のうち、ポルシェがグループCに合わせて造られたプロトタイプレーシングカーである。」

「ワークススペックが10台、カスタマースペックが1983年型12台、モトロニックを搭載し、956Bともいわれる1984年型6台の計18台が製作された。」

この28台の956が、世界を変えたといってもいい。

「935/76型
ポルシェがインディ500参戦用に開発した空水冷・水平対向6気筒・シングルターボの935/72型エンジンをツインターボ化したもの。」

「排気量は2,650ccで、左右3気筒ずつを担当する2つのターボチャージャーで1.2barに過給し、620PS以上を発生した。ただし1982年のル・マン24時間では燃費向上のため過給圧を1.1barとしている。」

「ディフューザーの傾斜角を確保するため、エンジンを前掲させて搭載している。」

「935/82型
935/76型のインジェクターをボッシュ製のエレクトリックコントロールユニット、モトロニックMP1.2により電子制御化したもの。」

「1984年にはツインインジェクター化された。また、1986年には排気量を2.8Lに拡大されたものが、カスタマーチームに供給された。」

「シャーシ
それまでの鋼管スペースフレームではなくポルシェでは初となるツインチューブ式のアルミニウムモノコックを採用した。」

「空力
グループCが燃費フォーミュラであることから低ドラッグであることが求められ、ポルシェとしては初めてグラウンド・エフェクトカーとして製作された。水平対向エンジンは横幅があるためグラウンド・エフェクトカーには不向きであるが、エンジンを5°前傾させて搭載しディフューザーのスペースを確保した。また、フロント床下部にはポルシェハンプと俗称される逆翼状の窪みを設けている。これはフロント・ベンチュリとして機能し、床下の気流の流速を維持する効果があるという。」

「1984年
リチャード・ロイド・レーシング(RLR)、アルミハニカム製モノコックの956-106BをWEC第7戦スパ1000kmにデビューさせる。」

「1984年
ワークス、WEC第8戦イモラ1000kmの予選でPDKを試用。」

「1985年
ワークスの使用車両、956から962Cに移行。」

「ニュルブルクリンク北コース(L=20.830km、1983 - 1984年)での絶対コースレコード6分11秒13は、ドイツの新鋭であったステファン・ベロフが1983年のニュルブルクリンク1,000kmのフリー走行中にこの車で記録したものである。」

最先端のエンジン、最先端のボディーワーク、プライベーターへの積極的な供給とサポート、レギュレーション変更への素早い対応、どれをとっても、完璧であり、非の打ち所がない。

国内の評価も、最大限の高評価である。

「ノバの森脇基恭は、956について「マシンに6か月保証が付いている」、「エンジンに6,000kmまでオーバーホール不要の保証が付いている」、「エンジンのオーバーホールがポルシェの一般車と同じ工場で行われるため費用が格安なこと」、「WEC全戦にポルシェからサービスカーが派遣されスペアパーツがその場で購入できる」、などアフターセールの良さについて絶賛している。」

「グループCの安全規定が変更(ドライバーのつま先がフロント車軸より後ろになくてはならない)されたことにより956は1987年以降は出場できなくなり、この規定に沿ってモディファイされた後継モデルの962Cにその座を譲り渡した。しかし、実質上は962Cは956の「エポリューションモデル」という位置づけになるため、基本的には同一車種として見なすことができる。」

ついでに、962Cも覗いてみよう。

(ポルシェ・962)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB962

「ポルシェ 962(Porsche 962 )は、1984年にポルシェがIMSA-GTPクラス用に開発・製作したプロトタイプレーシングカー。グループCレギュレーションで行われていたWEC用に開発・製作された962Cとともに1980年代のスポーツカー・レースにおいてポルシェに多くのタイトルとビッグイベントでの優勝をもたらした。」

はい、ここまで!(次回をお楽しみに)。

962Cは、結構面白いので、ちゃんと書く。

ルマンでは、82年から85年までの956と86、87年の962が通算連続6回の優勝を果たしている。

また、1994年にダウアー・962LMが優勝しており、合計では7回の優勝となる。

さらに、エンジンサプライヤーとしてではあるが、1996年と97年に、TWR ポルシェ・WSC95が優勝している。

(ポルシェ・WSC95)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BBWSC95

浮沈子は、これをポルシェの戦績としてカウントしていいかどうか迷っている。

例えば、1996年にヨーストが作成したWSC Joest Spyder (Typ 935/85)については、ポルシェは本国ページで紹介している。

(WSC Joest Spyder (Typ 935/85))
http://www.porsche.com/germany/sportandevents/motorsport/history/racingcars/90ies/1996-wscjoestspyder/

トムウォーキンショーレーシングが作成したWSC95も、これと同じではないのか?。

(1996 WSC Joest Spyder:日本語のページ)
http://www.porsche.com/japan/jp/motorsportandevents/motorsport/philosophy/history/racingcars/1996-wscjoestspyder/

「ヨースト側はあくまでもプライベートチームとしてポルシェからノウハウの提供を受ける立場でしたが、ポルシェとヨーストは実質的に、共同でこのWSCカーの開発を進めてきました。」

「ポルシェのスタッフをメンバーに加え、さらに体制を充実させたヨースト・レーシングチームは、予備予選の関門を難なくクリアしました。」

まあ、生殺与奪の権限はポルシェにあるのだから、外野がとやかくいうことはないだろう。

しかし、ドイツ語のウィキにも英語のウィキにも、ヨーストスパイダーの記述はない。

また、日本語と英語のウィキには、WSC95が出ている。

それが、事実だ。

いずれにしても、956は、総合力で他を圧倒し、完成度の高さに磨きをかけていった。

例によって、ドイツ語のウィキ。

(Porsche 956)
http://de.wikipedia.org/wiki/Porsche_956

例によって、例の本(Typenkompass Porsche Renn-und Rennsportwagen seit 1948)。

「耐久レーサー
・956Cクーペ(1982-85)6気筒ターボ2649cc:620馬力」

例によって、ポルシェ本国のページ。

(Porsche 956 C Coupé:1982-1985)
http://www.porsche.com/germany/sportandevents/motorsport/history/racingcars/80ies/1982-956ccoupe/

ポルシェジャパンのページ。

(1982 Porsche 956 C Coupe)
http://www.porsche.com/japan/jp/motorsportandevents/motorsport/philosophy/history/racingcars/1982-956ccoupe/

「パリに本部を置くモータースポーツ統括団体FIAはこの年、スポーツプロトタイプカーを対象とするグループCのレギュレーションを定めました。このレギュレーションを適用したスポーツカーレースは、1992年まで続けられます。このレギュレーション改正で、世界のスポーツカーレースは、最も生産車に近いレーシングカーのグループA、車両の大幅な改造が認められたグループB、ほとんど制限のないプロトタイプカーのグループCというように、大きく3つのカテゴリーに分類されることになりました。」

「グループCレギュレーションに準拠した2シーターレーシングカー「956 C」の開発が、ポルシェ社内で正式に承認されたのは1981年6月。ノルベルト・ジンガーが製作した5分の1スケールのクレイモデルを用いて、風洞実験設備でのテストが始められたのは8月のことでした。そして1982年3月27日には、ヴァイザッハのテストコースで第1号車による初めてのテスト走行が行われました。」

「ルールでは燃料の消費量に厳しい制限がありました。それと同時にこのレーシングカーではダウンフォースが大きな要素となったため、開発に際してはエアロダイナミクスにこれまで以上に重点が置かれました。アンダーフロアの設計に工夫を凝らしたことで、956は走行中にボディ上面とフロア下面に発生する気圧差を利用して、少ない空気抵抗で大きなダウンフォース(車体を路面に押し付ける空力作用)を生み出すことを可能としました。グループCカーでは、F1で採用されていたサイドスカートの装着が禁止されていましたが、956 Cはそれまでのスポーツカーを上回るコーナリングスピードを実現しました。後に956 Cはル・マンのミュルサンヌストレートで、350km/hという最高速度をマークしています。」

「グループCのレギュレーションでは、テールセクションを過度に長く設計することを禁じるために、全長とホイールベースとの比率も規定されていました。この規定に従うため、917で230cmとされていたホイールベースを、956 Cでは265cmとしました。これはポルシェの歴代レーシングカーの中で最も大きな数値でした。」

「956 Cにはポルシェのレーシングカーでは初めてとなる、アルミニウム製のモノコックシャシーが使われていました。またサスペンションは、下側のウィッシュボーンだけが走行中の気流にさらされる構造で造られており、コンポーネントの全てが強いダウンフォースによって生じる大きな負荷にも耐えられるように設計されています。」

「956 Cには開発当初、優れた実績を積んだエンジンが搭載されました。それは前の年に936をル・マン優勝に導いた、2.65リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンでした。最高出力は約635PS/8,000rpm、車両重量は約800kg。パワーウエイトレシオは1PSあたり1.35kgでした。」

「この956 Cは1984年までの間に28台が生産されました。」

(ポルシェ 956 C クーペ(1983))
http://www.porsche.com/japan/jp/motorsportandevents/motorsport/philosophy/history/racingcars/1983-956ccoupe/

「この年の4月に開かれたジュネーブモーターショーでは、ポルシェ社内でTTE P01 V6と呼ばれたF1用パワーユニット、TAGポルシェエンジンが初公開されました。ハンス・メツガーの設計したバンク角80°のV6ターボエンジンは、軽量でコンパクトな点が大きな特徴でした。補器類の全てを装備しても、わずか150kgという軽さでした。ボアは82mmでストロークは47.3mm、排気量は1,499ccでした。ポルシェでは、マクラーレンのシャシーに搭載されるこのエンジンの最高出力について、600PS/10,000~11,500rpmと公表しています。初期テストの時には956に搭載され、ヴァイザッハのテストコースを走りました。マクラーレンのシャシーに搭載してのテストも、その直後に同じヴァイザッハで行われました。」

これは知らなかったな。

「ポルシェでは前年型956 Cのエンジンにさらに開発を加えました。世界のモータースポーツを統括するFIAは、当時600リッターに制限されていた1,000kmレースでの燃料消費量を、1984年より510リッターに引き下げると発表しました。ポルシェではこれに対応して、電子制御式のフューエルインジェクションシステムを導入し、これまでよりも8.5PSのパワーアップに成功しました。」

このクルマは、革新である。

真のレースカーといってもいい。

あらゆる要素を最適化し、計算ずくで進める現代のレーシングカーだ。

さらに磨きをかけていく962Cは、向かうところ敵なしの状況になっていく。

しかし、何事にも終わりがあり、それは、唐突に起こるのだ。

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